お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
柔和な笑顔と、涼やかな瞳。ずっと恋焦がれていた彼が目の前にいて、頭の中がひどく混乱した。
「柊……一朗……さん?」
柊一朗さんは私の両肩を抱きとめながら、雉名さんに向かってにっこりと微笑む。
「仲良くしてもらっているところ、悪いけれど。彼女には先約があるんだ。身を引いてもらっていいかな」
不思議なことに、笑顔にもかかわらず声にピリッとした緊張感がある。聞いたことのないトーン、柔らかな言葉使いの奥に敵意が見えた気がして……。
あれ? なんだか、変……。
「へぇ。まさか、あんたが見合いの相手?」
雉名さんは、挑発するようにニヤリと口の端を跳ね上げる。どうやらこの事態を心底楽しんでいる様子。
「柊……」
彼に呼びかけようとしてハッとする。雉名さんの中で、彼は『穂積柊一』だ。本名を口に出すのはやめた方がいいかもしれない。
「……穂積さん」
その呼び方に噴き出したのは雉名さんの方だった。
「なにも言い直さなくてもいいだろ」
どうやら雉名さんは、私が関係を隠したいから名前を言い直したと誤解したようで――実際、隠したくもあったけれど――冷やかすみたいな生ぬるい眼差しを携えている。
「柊……一朗……さん?」
柊一朗さんは私の両肩を抱きとめながら、雉名さんに向かってにっこりと微笑む。
「仲良くしてもらっているところ、悪いけれど。彼女には先約があるんだ。身を引いてもらっていいかな」
不思議なことに、笑顔にもかかわらず声にピリッとした緊張感がある。聞いたことのないトーン、柔らかな言葉使いの奥に敵意が見えた気がして……。
あれ? なんだか、変……。
「へぇ。まさか、あんたが見合いの相手?」
雉名さんは、挑発するようにニヤリと口の端を跳ね上げる。どうやらこの事態を心底楽しんでいる様子。
「柊……」
彼に呼びかけようとしてハッとする。雉名さんの中で、彼は『穂積柊一』だ。本名を口に出すのはやめた方がいいかもしれない。
「……穂積さん」
その呼び方に噴き出したのは雉名さんの方だった。
「なにも言い直さなくてもいいだろ」
どうやら雉名さんは、私が関係を隠したいから名前を言い直したと誤解したようで――実際、隠したくもあったけれど――冷やかすみたいな生ぬるい眼差しを携えている。