お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
言い淀む私を見て今度こそ深く息をついた彼は、くるりと踵を返しツカツカと歩き出した。

「あ、あの、柊一朗さん?」

彼の背中を追いかけていくと、歩道の脇に黒くてスマートな高級車が停まっていた。

仕事用だろうか? その助手席を開き、私へ感情の読み取れない眼差しを向ける。

「乗る? それとも、乗らない?」

「の、乗りますよ!」

乗らないと言ったらそれこそこじれてしまいそうで、私は戸惑いながらも助手席に腰を下ろした。彼はドアを閉め、運転席側へ回る。

彼が車に乗り込むまでの間、私は雉名さんとの一連の行動を思い出して肝を冷やしていた。

顔を近づけていたところ以外にも、見られていただろうか。頭を撫でられたところとか、私が彼の肩を叩いたところとか。

うしろから見たら、イチャついていると思われたかも……。

彼が運転席のドアを開け腰を下ろした瞬間、私は身を乗りだして詰め寄った。

「柊一朗さん、あのですね――」

「雉名と、どこへ行くつもりだったの?」

「行きません! 約束なんて、してません! 帰りがけに、偶然会っただけで……」
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