お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
午後八時。家に帰ると、けたたましい赤ちゃんの泣き声が響いていた。

姉に男の子が生まれて、四カ月になる。

笑っているときの赤ちゃんは天使のようにかわいいけれど、泣き止まないときは悪魔の生まれ変わりじゃないかと思うくらい手がつけられない。

「ああ……だめ、幸次さん、代わって」

「ほーら、いい子でちゅね~、おねんねしましょうか~」

姉はどうやら産後鬱のようで、最近酷くまいっている。

第一子であることのプレッシャーと、睡眠が小刻みにしかとれないこともあって、精神、体調ともに不安定みたいだ。

我が家に婿として来てくれた幸次さんは、そんな姉を献身的にサポートしてくれて、心優しい旦那さんが見つかってよかったねと、妹ながらにしみじみ思う。

とはいえ、姉夫婦がうちにやってきて半年。すっかり私の肩身は狭くなり――。

「澪はまだかしらねぇ……」


母はこんなことをポロポロこぼすようになった。

「澪、いい人はいないのかい? お父さんが知り合いに頼んで、お見合いを用意してあげようか?」

父は私が恋愛結婚なんて出来ないと思っているらしく、仕切りにお見合いを勧めてくる。
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