お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
手を差し出すと、その手をとって、彼女はゆっくりとシートから降りてくる。

わずかにかみしめた唇、抗えないのが悔しいといった顔で、俺をじっと見つめている。

「そんな顔をされると、また余裕がなくなってしまうよ。俺に動じないでいてほしいんだろ?」

「だったら、私はどんな顔をすれば」

「そうだな……まず、その眉間に皺をやめようか」

彼女の眉間をくいっと親指で持ち上げると、途端に眉が下がって情けない顔になった。予想以上におもしろくて、思わず「あっははは」と噴き出してしまう。

「もう! からかうなんて!」

ぷんすか怒る彼女も、愛らしくてとてもいい。こういうところは純粋で子どものように素直だ。

とにかく、彼女にまつわるなんでもかわいらしいと思ってしまうほど、我が身は彼女に溺れていて。

「冗談だよ。部屋へ行こう、澪」

なにもせぬままで帰すつもりはないけれど、と心の中でつけ足して、彼女の肩を抱いた。
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