お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
三十階にある部屋に辿り着き、玄関に足を踏み入れたところで、取り急ぎ壁に彼女を押しつけて、唇を味わった。

寝室まで、あと少し。けれどまだ長い廊下がある。

……彼女を手に入れるまでがもどかしい。耐えられるだろうか?

「柊一朗さ……もう、靴ぐらいゆっくり脱がせてください……」

今度こそ本当に迷惑そうに俺の体を突き放し、パンプスを脱ぎ揃える。

「気は済んだ?」

「きゃっ」

まどろっこしくなった俺は、彼女の体を抱き上げて、すぐさまベッドへと連れて行った。

「ま、待って、いきなりベッドって……!」

真っ赤になってジタバタと暴れる彼女、けれど、俺が真面目な顔をすると、途端に恐縮して、切なそうに瞳を潤ます。

「もう限界だよ、ずっと抱きたいって思ってた」

「あの……でも、シャワーとか、あと、ほら、夕ご飯とか」

そんなにベッドインを先延ばしにしたいのだろうか、それとも、単に照れているだけ? あわあわと言いわけをする唇を乱暴に塞ぎ、彼女の体をベッドの上に沈めた。
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