お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「夕食は、あとでたっぷり食べさせてあげる。だから、まず、澪を食べさせて」

彼女は口元を押さえ、今にも泣きそうな顔をする。おろおろと目が泳いで、困惑している様がありありとうかがえた。

一瞬、本気で困っているのかと疑い始めたとき。

「じゃあ、少しだけ……ですよ?」

ささやいた彼女のはにかむ笑顔にたまらずかき立てられる。

少しってなんだ、という突っ込みと、少しで収まるわけないじゃないか、という嘲笑と。

とにかく、放っておけば笑い出してしまいそうなほどに緩み切った頬を隠し、彼女の服を剥ぎ取った。

鎖骨に口づければ、ぴくんと体を震わせ、舌を滑らせていけば、湿った吐息を漏らす。

指先を近くに持っていくだけで、顔が真っ赤に染まって涙がこぼれ落ちそうだ。

別に体を重ねるのが初めてというわけでもないのに、どうしてこんなにも初々しいのか。

脇腹をくすぐるように撫でてみると、なまめかしく体をくねらせ、甘ったるい声が喉の奥から漏れてきた。やめられなくなりそうだ。

敏感な部分には触れてしまわないように、そっと胸の膨らみを外側から辿る。

唇を這わせると、彼女は声なき声をあげて、必死に唇をかみしめた。
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