お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
二年前――。

関西支部の支部長を務めていた俺は、半年に一度行われる定例報告会へ参加するため、東京本社を訪れた。

そこで、たまたま行われていたとある諮問会議に呼び出されることとなる。

わずかに遅れて会議場へ向かうと、扇状に配置された会議卓に重役の面々が並んでいて、ひとりの女性が中央に立たされ、責め立てられていた。

『どうせ金目当てだ』

『こんな騒動を起こして恥を知れ』

『なんの役にも立たないお飾り社員がこんなことをして、厚かましいと思わないのか』

やじが次々に飛んできて、俺はいったいなんの会議にやってきたのか、わからなくなった。

魔女裁判か、これは。

状況は聞いていた。セクハラだと訴えてきた被害者六人は全員金で篭絡され、残りは騒動の主犯格である彼女ひとりを説得するのみ。

説得、というよりは責め苦だけれど、と俺は呆れを通り越して驚嘆すらしていた。

こんな光景、現代社会で見られるとは思わなかった。

彼女は、どんな圧力にも負けず、毅然とした態度で前を向いていた。

ぴんと真っ直ぐに伸びた姿勢は、プライドの現れだろうか、とても気高く感じられた。
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