お見合い求婚～次期社長の抑えきれない独占愛～

『前言を撤回し、謝罪しなさい。今なら謹慎程度で済ませてやる』

がなり立てる男たちに、彼女はふるふると首を横にする。

「撤回するつもりはありません。私は事実だけ主張します」

その凛とした瞳の、見惚れるほどに美しいこと。

途端に自分が恥ずかしくなった。非は我々にあるのに、どの面下げて避難を浴びせるのだろう。

あくまで他人を装って、一番奥の座席に座りながらこの会議の行く末を見守っていたが、次第に憤りを覚え始め、奥歯をギリッとかみしめた。

なにも出来ない自分が不甲斐ない。なにが次期社長だ、この厚顔な面々を鎮める力をなにひとつ持たないくせに。聞いて呆れる。

『さっさと謝れ！　女のくせに！』

正面の男が彼女にペットボトルの水をかけた。彼女は一瞬目を閉じた程度で、降りかかる水を抵抗ひとつせず受け入れた。

髪からぽたぽたと雫を滴らせたまま、再び真っ直ぐ前を向く。

「……もう、いいでしょう」

さすがに我慢の限界を迎え、俺は立ち上がった。

男尊女卑の極みともいえる発言、水をかけるのはもはや暴力だろう。

それで自らを恥じないのだとしたら、犯罪者となんら変わりない。