お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
叩かれた頬が熱を持ってじんと痛む。触れると、彼女にかけられた水のせいで、わずかに濡れていた。

――『あなたみたいな人がいるから』――

その通りなのかもしれない。現に、権力に媚びているのは誰だ。自分に出来ること、出来ないこと、冷静に線を引いて、なにもしようとしないのは誰だ。

いつかいつかと言いながら、俺はなにもしていないじゃないか。

俺は彼らと同じだ。裁かれても、文句は言えない。

彼女の強い瞳が頭の中にこびりついて、罪の意識を存分に与え続けてくれた。

贖罪のように計画したのは、経営者側と社員たちを公正な立場で監視することの出来る監査機関の設立だ。

少しずつ周囲に呼びかけて、協力者を増やし、下準備に二年かかった。

父親は、そろそろ俺に代を譲りたいと言い出していて、頃合いだ。

しばらく保留にしていた千堂家の『課題』にも、そろそろ手をつけようかと考え始めていた。

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