お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
彼女との出会いから二年経ち、粛清、および代替わりの下準備が整い始めたころ。

俺はとある資産家の家を訪ねた。

様々な企業の株を大量に保有し、財界の重鎮として名を知らしめている人物だ。その人脈は日本国内に留まらず、彼が口を開けば石油王だって動くと言われている。

父の代からお世話になっているその人のもとへ個人的に赴き、せめてもの手土産にと高級羊羹を持っていった。

彼は決して金品を受け取らない。というより、少々お金を積んだところで、彼にとってははした金にすぎず、魅力を感じないのだろう。その割に羊羹は喜ぶのだから不思議だ。

荘厳な日本庭園が覗く和室に通され、俺は畳に手をついて挨拶した。

「ご無沙汰しております。千堂総一の息子、柊一朗です」

「千堂の坊ちゃんか。立派な面構えになって。して、わざわざこんな場所まで足を運んでなんの用かね?」

見た目は、タヌキ親父という表現がしっくりくる、でっぷりとした老齢の男性だ。

人のよさそうな笑みを浮かべてはいるが、荒場を潜り抜けてきた貫禄も備わっている。
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