お見合い求婚～次期社長の抑えきれない独占愛～

「雉名さーん。今日こそ飲みに行こうよ」

「はぁ？　いかねぇっつってんだろ」

そのとき出会った雉名は俺と同じ歳で、人とつるむのが嫌いらしく、いつも周囲からの飲み会の誘いを断ってマイペースを貫いていた。

そういう人間を見ると、懐柔してしまいたくなるのが俺の悪いくせで。心を開くことが出来るかと、試されているような気さえする。

「ほら、雉名さん、俺とタメだし。なんだか親近感湧いちゃって」

「しらねーよ。つか馴れ馴れしいなオイ」

「敬称省略していい？」

「はぁ？　好きにしろよ」

「じゃあ、大地」

「気持ち悪いな！　苗字で呼べよ！　つか距離が近ぇよ！」

結局、なんだかんだつきまとっているうちに、一緒に飲みにいく仲になり、俺はある種の達成感を味わっていた。

駅前の焼き肉屋でビールを傾けながら、俺はなにも知らない新人の振りで彼から情報を聞き出そうとした。

「総務の立花さん、かわいいよね？　彼氏いるかな？」

「ああ。ああいうのが好みなのか？」

雉名の視線は俺よりも鉄板で、ひたすらトングで肉をひっくり返している。

ふたりなら楽勝で食べ放題の元がとれてしまいそうだ。