お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「幸次さん、抱っこ、代わろうか?」

選手交代を名乗り出ると、幸次さんは人のよさそうな笑顔を浮かべた。

「いや、大丈夫だよ、澪ちゃん。仕事が終わったばかりで、疲れてるだろ」

「大丈夫、陸くんに癒してもらうから」

「じゃあ、少しだけお願いしようかな」

私が抱き上げると、陸くんはぴたりと泣き止み、キョトンと目を丸くする。

「すごいよ澪ちゃん。一瞬で泣き止むなんて」

「ええと……陸くん、びっくりしてるだけなんじゃないかな」

訝し気に覗き込むと――あ、笑った!

きゃきゃっというあどけない声が部屋中に響き渡って、姉も、幸次さんも、両親も、みんなの顔が笑顔になる。

「上手だね、澪ちゃん!」

「あんた、いい母親になるかもね」

「母親の前に、まず早く結婚してほしいけれどな」

こんな場面でも、嫌味がちくり。
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