お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「ごめ~ん、ついでにこれもお願いできるかな?」

慌てて私のデスクに駆け寄ってきたのは、営業部の中野さんだ。

「この書類を渡してほしいんだけど……」

「ついでって……このクライアント、これから行くところと逆方向ですよ」

面倒というわけではないのだけれど、移動に時間がかかってしまいそうだ。

クライアントの終業時間をすぎてしまうかもしれないが大丈夫だろうか?

「何時までに持っていけば間に合いますか?」

「特に時間の指定はなくて、帰りがけに寄ってくれればいいって言ってたよ。着いたら、ここに電話してって」

そう言って手渡されたのは、電話番号が走り書きされているメモ紙だった。

「これ、どなたの番号ですか?」

「穂積くんの仕事携帯。彼、この書類持っていくの忘れちゃったんだって」

「穂積さん……」

彼の名前を聞いて、反射的にぴくりと肩を震わせる。
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