お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
パンツスタイルとローヒールで出社する日も多い中、今日に限ってどうしてこんな格好をしてきたのかといったら――。

……私、浮かれてたのかな。恥ずかしい……。

緩くウェーブのかかった焦げ茶色の髪をくしゃくしゃと雑に撫でながら、苦虫をかみ潰したような自分の顔と鏡越しに対面する。

ううーん、見るからに平均点。どこをとっても特徴がない。

こんな私を、彼が相手にしてくれるはずがないのに……。

複雑な気分でバッグの外ポケットに入っている電話番号のメモに触れる。

もし穂積さんが約束のことを忘れているようだったら、私も忘れた振りをしてさっさと帰ろう……。

エレベーターが一階に到着し、鏡に映る情けない私とお別れして、オフィスビルを出た。

空は今にも雨が降り出しそうで、もう夜かと勘違いするくらいに薄暗い。

数日前は気温が三十度に達し、真夏日だと騒いでいたのに、今日は雨のせいか風がひんやりとしていて、外出にはちょうどいい。
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