お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「母さんとなにを話していたの?」

「……内緒です」

柊一朗さん専用のスイートルームまで戻る道すがら、彼は私とお母さまの密談に探りを入れてきた。

いつも通りの余裕の表情。でも、そうやって尋ねてくるってことは、結構気になっているのかもしれない。

「ふたりして俺の悪口なんて言ってないだろうね」

「ちょっとだけ」

「怖いなぁ。女性が結託すると」

そんなことを言い合って、私たちは二十九階のセレブリティなフロアを歩く。

「それより、お腹減らない? ルームサービスを頼もう」

「さっきのアフタヌーンティー、もう下げられちゃいましたかね? 着物を脱いだら思いっきり食べたいなって」

「俺はどっちかっていうと普通のディナーを食べたいよ」

大きな両開きの扉の前で、彼はカードキーを滑らせる。

部屋に入り、扉を閉めた瞬間、彼は私をうしろからぎゅっと抱き寄せた。

とはいえ、背中には大きな帯があるから、あまり密着度は高くないけれど。
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