お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「香りがすごくいいですね」

「ラウンジでは飲めない、裏メニューだ」

「柊一朗さんって、いつもこんな贅沢をしているんですか? 私だったら太っちゃう」

「コーヒーだけはよく頼むかな。食事は、さすがに普段は食べないよ。ひとりで食べたってつまらないしね。今日は澪がいたからだ」

そう言って、おいで、と私へ左腕を伸ばす。

ちょっぴり躊躇ってしまったのは、自分から甘えにいくのがなんだか照れくさかったから。

でも、思い切って彼の腕の中に腰をおろし、ぴったり寄り添ってみると、「やっとそばに来てくれた」と彼がうれしそうな顔をしてくれたから、私までなんだか満たされた。

「……本当はさっき、母さんとなにを話していたの? 怒らないから言ってごらん」

「そんなに気になるんですか?」

「変なことを吹き込まれて、澪が俺の手の中から逃げてしまわないか心配なんだ」

そっと優しく引き寄せて、ゆったりとした口づけをくれる。味わうように、丁寧によく食んで、私の唇を吸いつくす。
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