お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「ん……コーヒーの香り……」

「澪は……どうしてだろう。同じ香りのはずなのに、なんだか甘い」

ペロペロと、私の味を確かめるように彼の舌が唇を舐めとる。次第に彼の体が私の方へ倒れてきて、口づけがどんどん熱を増す。

「や、やだっ……そんなにされると……」

「バニラの味がする。どうして?」

「え? し、しらな……バニラなんて、食べてませ……」

「で? 母からなにを言われた? 質問に答えないと唇の味だけじゃ済まないよ」

「んん、ちょっと待っ――」

やっぱり、彼の腕の中に自分から飛び込んでいったのは失敗だった。

逃げ出そうとする私の腕を掴みソファの背もたれに押しつけて、今度は首筋に鼻先を当ててスンスンと匂いを嗅ぐ。

「わ、わかりましたから、ちょっとやめて!」

耳の下に彼の吐息がかかってくすぐったい。

たまらず涙目で抗議すると、すっかりご機嫌になった彼が首筋のあたりから上目遣いで私を見た。
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