お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
埃まみれの段ボールに気がついた上村さんが、視線を落としてギョッとする。

「う、わ、すごい埃ですね」

「うわ、じゃねぇって」

「きゃっ」

雉名さんが、上村さんの額をピンと指で弾く。

上村さんに対してそんなことをするのは初めてで、された本人も、私も、驚いた顔で雉名さんを見上げた。

「あんた、新人なんだろ? 先輩にやらせてんじゃねぇって。フツーは私がやりますって挙手するもんなんじゃねぇの?」

「へ!? ふああ、そ、そっか、ごめんなさい……! 立花さん、私、気が利かなくて!」

かわいそうなくらい頬を赤くして、私に向かって頭を下げる上村さん。

「あ、ううん、私がいつも勝手にやってたことだから! ……雉名さん、そんな言い方しないでください! 頼まなかったのは私ですし、上村さんが悪いわけでは――」

慌ててフォローに回ろうとしたけれど、雉名さんの視線は上村さんの方へ向いていた。

「次から荷物は、お前がとりにいけ」

「は、はい! わかりました!」

「力が必要なら。俺を呼べ」

「……え?」

雉名さんはおもむろに、上村さんの机の上にあった付箋とペンを拝借して、サラサラとなにかを書き殴った。
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