お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「もうそんな話を?」

「まだ先だって話したんだけれど、楽しみで仕方ないみたいだ。澪にもうるさくつきまとうかも知れないけれど、ごめん、許してあげて」

そう言って、部屋の隅にあるメタリックなラックを指差した。そこには、前回来たときにはなかったはずの、ファイリングの山が出来ていて。

「あれ、なんです?」

「式場とウェディングドレスのカタログ。知り合いのデザイナーたちから大量にとり寄せたらしい」

「ええっ!?」

「それだけ楽しみにしてるってことらしいよ」

気の早い話に、ポカンと口を開けると、彼は困ったように笑って私をなだめた。

「父も……すまないって言っていた。澪を会社のドタバタに巻き込んで」

お父さまの話題になって、私はハッと顔を上げる。

「そんな……! 私の方こそ、お父さまになんて言ったらいいか。こんなことになってしまったのは、私のせいで――」

「澪」

まくし立てる私を、彼は冷静にたしなめると、そっと肩を撫でて落ち着かせた。
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