お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
それにしても、そんな輝かしい経歴を持つ彼が、どうしてうちみたいな小さな会社に派遣されてきたのだろう。余計に謎が深まった。

「……穂積さんて、どうしてうちの会社に?」

「ああ、社長にちょっとしたツテがあって。営業経験を積ませてほしいってお願いしたんだ。ずっと経営にばかり携わってきて、その辺、やったことなかったから」

「はぁ……」

ってことは、やったこともない職種なのに、いきなり営業成績トップを独走しちゃったんだ。

他の営業さんが聞いたら、泣いちゃうよ……。

「営業も楽しかったけれど、地盤固めが目的だからね。大人しく本業に戻ることにするよ」

「そうですか……その、頑張ってください」

経営なんて縁遠くて、いったいなにをするのかはよくわからないけれど、きっと彼ならなんだって、そつなくこなしてしまえるのだろう。

『中小企業の営業』から、『大手企業の経営コンサルタント』かぁ。

なんだか格好いい響き。彼、ますますモテちゃうんだろうなぁ。

思わずしんみりして、うつむいてしまった。
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