お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「大丈夫でしたか? 怪我、しませんでした?」

「お姫さま抱っこくらいなら余裕なんだけれど。さすがに落ちてきた体を受け止めるとなると厳しいね……」

そう苦笑して、私の体をそっと床へ下ろしてくれた。ふらついた私がちゃんと自力で立てるまで、腰に手を添えて支えてくれる。

「ありがとうございます」

「いえいえ」

迷惑さを微塵も感じさせない爽やかな笑顔。

顔がいいだけじゃない。愛想もよくて人懐っこい。

彼は誰に対しても紳士で、好感度の塊のような人だ。

「それにしても、無茶するね。力仕事なら男性社員に任せればいいのに」

「ですけど……これは総務の仕事なので……」

従業員数、百人程度のこの会社に、総務職員は四名。

ひとりめは頼みごとをするのもはばかられる強面総務部長。

ふたりめは還暦に程近いベテラン女性社員。

それから私と、最後のひとりは今年入社したばかりのフレッシュな新人の女の子。

ということで雑務は私の仕事である。

新人に頼んだらって? でも、かわいい新人の女の子に肉体労働をお願いするのもかわいそう……ということで、自分でやった方が気楽なのだ。
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