お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「立花さんと仕事以外の共通点を作りたいな。じゃないと、契約が終わったあと、俺のことを忘れちゃうでしょ」

「仕事、以外って……」

「なんでもいいよ。君の好きな食べ物でも、お酒でも。君が許してくれるなら、もっと簡単な方法もある」

ただならぬ空気と熱っぽい眼差しに、私はおっかなびっくり首を傾げる。

彼は微笑んでくれたけれど、いつもの人懐こいやつじゃない。

もっと狡猾なとらえどころない笑みで――。

「隙だらけのその唇にキスしちゃえば、俺のことを忘れるなんてできないよね?」

そう言って、私の顎を指先で軽く押し上げ、上を向かせた。

唇を戯れに近づけては、距離をとり、まるで私の気持ちを推し量っているようで……。

「穂積……さん……?」

声が震える。

「……おいで」

建物の影へと連れ込まれ、抱き寄せられた。頬に当たる彼の胸からは、トクントクンと脈打つ鼓動が聞こえてくる。

深夜にほど近い、静まり返ったオフィス街。人通りもほとんどないし、車もたまに走り去るくらいだ。

そんな静かな空間に、彼の力強い心音と、甘い声が響く。
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