お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「なにも、総務じゃなくたっていいじゃないか。立花さんのお願いなら、誰だって喜んで聞いてくれるでしょ」

すると彼は、私が椅子の上に立って必死に持ち上げようとしていた段ボールを、その場でひょいっと難なく抱え上げた。

推定身長一八五センチの彼なら、足場なんてなくたって楽勝だ。

「背が高いって、いいですよね。うらやましいです」

「俺は小さくてかわいい立花さんの方がうらやましいけどなあ」

さりげなくかわいいという単語を織り交ぜられて、あやうく赤面してしまうところだった。

違う違う、かわいいのは私ではなく、一五五センチの身長だ。

「小さいと不便なことばかりですよ。その点、大きくて不便なんて、ないじゃないですか」

「そんなことないよ。市販の服は丈が短くて着られないし、日本家屋の入口には頭をぶつける。新幹線だと足が前の座席につっかかるし、電車で立つと外が見えない」

「え? 見えないんですか?」

「路線によっては窓が目の高さより下にあるからね」

それは息が詰まりそうだ。背が高すぎるのも大変なんだなぁ、と納得。

「でも満員電車だと息はしやすそうですよね。押しつぶされたときに背が小さいと酸欠になってしまいますから……」

「ああ。それは確かに深刻だ。自分の周りに小柄な女性がいると、潰してしまわないか心配になるよ」

困り顔でふんわりと笑う。女性受けする癒し系の顔立ち。見ているとふにゃんと心がとろけそうになる。
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