お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「メイク、すっかり落ちちゃったね。キスしすぎたかな」

「……きっと、ひどい顔ですよね」

シャワーも浴びず、メイクもそのまま。

ファンデやリップは落ちてしまったけれど、頑固なマスカラはまだ残っているようで、睫毛が絡まって瞬きしづらい。

目の下を指で拭うと、やっぱり落ちかけのアイメイクがくっついてきた。たぶん今、パンダなんだろうなぁ。

「ひどくないよ。余計に色っぽく見える。気になるならシャワー浴びておいで」

「……お借りします」

「でも、その前に水分補給かな。声が枯れてる」

どうして枯れているのかといえば――考えて赤面した。朝から思い出すには、ちょっと刺激が強すぎる。

「お水持ってくるから、ちょっと待ってて」

彼はベッドから這い出て、脱ぎ捨てられていた衣服を身に纏った。

彼がリビングに向かったあと、私もブラウスとスカートを身に着け、遅れて彼についていく。
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