お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「よっと」

咄嗟に、駆け寄って来た男性が私の体を支えてくれた。

その人にしがみついて、なんとかチェアの上に踏みとどまる。 

「あぶねーなーもう」

「あ、ありがとうございます」

手を借りながら、チェアから降りて地面に足をつけると、私を支えてくれた男性は、最上段の段ボールをあっさりと抱え上げた。

彼も身長が軽く百八十センチを越えていて、高い場所の荷物くらい楽勝らしい。

「で。これをどこに運びたいんだ?」

「えと、総務に」

「仕方ねーな。ほら、いくぞ」

段ボールを抱えて、彼は来た方向を逆戻りする。

その男性社員が、強面な見た目と噂に反して意外と親切だったので、今、私はちょっとびっくりしている。

「ありがとうございます。その、まさか雉名さんに助けてもらえるなんて……」

彼――雉名さんは、眉間に皺を寄せると「どういう意味だそれ」ちょっといかついトーンで私を睨んだ。

私は、うっとたじろぎつつも、怖い人だと思っていたなんて言えず、言葉を探す。
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