お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「今日助けたお礼に、夕食をご馳走させて」

「『ご馳走させて』? 『ご馳走して』じゃなくてですか?」

「気になるフレンチのお店があるんだけれど、一緒に行く人がいなくて困ってたんだ。人助けだと思って付き合ってよ」

パチパチと目を瞬く私を楽しそうに眺めながら、彼はニッコリと微笑む。

社交的で女性からも大人気な彼が、一緒に行く人がいなくて困るなんてことあるのだろうか。

「そうだな……来週の金曜日、開けといてくれる?」

「え……いや、でも、私……」

思わず怖気づいてしまったのは、普段から男性とふたりで食事をすることに慣れていないからだろうか。

しかもフレンチ、ご馳走までしてくれるという。相手が私で本当にいいの?

いや、でも、デートをしようと言われたわけではないし、肩肘張らずに普通にご飯を食べるだけなら……。

ぐるぐると考え込んでいるうちに、彼はさっさと別の話題に切り替えて、私が反論する隙を封じてしまった。
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