お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「そうだ。このあと営業で出かけるから、例のジェラート屋さんに寄ろうと思って」

「……ええと……あ、この前、見つけたって言ってた有名なジェラートショップですか?」

「そうそう。お土産に買ってくるから、みんなで食べて」

「え!? 本当ですか!? うれしいです!」

マメな彼は、営業ついでに近くの人気スイーツ店に足を運んでは、お土産を買ってきてくれる。

それも、女性社員全員くらいには行き渡る量を、どさっと。

おかげで女性社員たちは、彼の外見に虜なうえに、胃袋まで掴まれてしまっている。

私に至っては、餌づけされたといっても過言ではない……。

「そのお店、上村さんと一緒にネットで検索してみたんです。すごくおいしそうで」

「中でもシナモンアップルがすごーくおいしい」

「もう食べたんですか?」

「もちろん。寄り道は営業の特権だろう」

そんなことを言って彼は胸を張るけれど、平日の真っ昼間に、スーツ姿の男性がひとりでジェラートを食べるって……。

「ひとりで食べるのは……結構勇気がいりませんでしたか?」

「だいたい女の子に話しかけられるから、最終的にはひとりじゃなくなる」

「……それ、ナンパって言うんじゃ――」

「連絡先は聞かないよ。だからナンパじゃない」

にっこりと笑って全力否定。おそらく実際は、ナンパじゃなくて逆ナンなのだろう。
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