お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「しゅ、柊一朗さんっ、少しふたりきりでお話できませんかっ!」

とにかく、彼がなにを企んでいるのか、はっきりさせておかなくちゃ。

そして、可能な限り口留めをしておこう。とくに、清いか清くないかのあたりについては……! 

いきり立って腰を浮かせた私に、彼も微笑みながらゆっくりと立ち上がる。

「もちろん、かまいませんよ。……少々席を外してもよろしいですか?」

双方のご両親から、いってらっしゃいと背中を押されて、私たちは個室を出た。



彼は私を連れて外に出ると、庭園をぐるりと回り、家屋から少し離れたひと気のない場所まで歩みを進めた。

回遊式の日本庭園で、中央には大きな池があり、その周囲は石組されている。もみじ、老松などの植栽の他、灯籠や手水鉢などの人工物に彩られ、合間を縫うように敷石や小橋の散策路が敷かれていた。

都内にこれだけ整備された広い庭園は珍しい。来る前に調べたのだが、大富豪のお屋敷の跡地を使って料亭を営んでいるらしい。

完全にふたりきり、周囲に誰もいないことを確かめて、私は意を決した。
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