お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
知られていた。私のこれまでの行いを、全部知って……。

ぐらりと眩暈がして、足元がふらついた。

彼は「大丈夫?」と私の手をとり、木組みのベンチまで私の手を引いていって座らせてくれた。

その隣に彼も座って、そっと背中の、帯下のあたりに手を添えて支えてくれる。

「察しはついていると思うけれど、『穂積柊一』という人物は存在しない。『千堂柊一朗』、それが俺の本名だ。日千興産の専務をしている。いずれ父の跡を継ぐ予定だ」

「……専務というのは知っていました。社長の息子さんだとは思いませんでしたが……」

「隠していてすまなかった」

殊勝な態度に、胸がぎゅっと締めつけられる。それを言ったら、隠そうとしたのは私の方だ。

「……嫌われると思っていました。私の素性が知られたら――」

「君はなにも悪いことはしていないじゃないか。非があるのはこちらの方だ。日千興産を代表して謝罪するよ。うちの幹部たちが、君に失礼なことをした」

「え……?」

驚きに目を見開く。どうして彼が謝るの? 私は過去に、日千興産に大きな損害を与えようとしたのに。
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