お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
当時の私がしたことは、経営者である彼からすれば許しがたいことだったと思う。
むしろ、どうして彼が平然とした顔で私と向き合っているのか、不思議でならないくらいだ。
「いいんですか? だって、私、あなたの会社で『あんな事件』を起こしてしまったのに……」
「その件に関しては、君はなにも悪くない。いずれちゃんと向き合いたいと思っていたんだ。だが、まず俺が君に結婚を申し込んでいるのは、その件とは無関係だとわかってくれ」
彼のあまりにも真剣な表情が目に入ってきて、怯んでしまった。
鼓動がドクドクと不穏な音を立てている。私は胸の前できゅっと手を握って息を呑んだ。
「確かに、俺が君を知るきっかけになったのは、二年前の『あの事件』だった。偽名を使ったのは、『千堂柊一朗』として君の前に立ったんじゃ、勝算がないと思ったからだ。こんな肩書きじゃ避けられることは目に見えている。先入観を持たれずに、ひとりの男として見てもらうためには、別人に――『穂積柊一』になるしかないと思った」
そして、私は彼の期待通り、『穂積柊一』に恋をした。ふたり、体を重ね合い、これからも関係が続いていく……はずだった。
ここで私が彼の正体に気づいて逃げ出してしまったのは、誤算なのだろう。
もしもあのまま関係が続いていたら、いつかは正体を打ち明けてくれるつもりだったのだろうか。
むしろ、どうして彼が平然とした顔で私と向き合っているのか、不思議でならないくらいだ。
「いいんですか? だって、私、あなたの会社で『あんな事件』を起こしてしまったのに……」
「その件に関しては、君はなにも悪くない。いずれちゃんと向き合いたいと思っていたんだ。だが、まず俺が君に結婚を申し込んでいるのは、その件とは無関係だとわかってくれ」
彼のあまりにも真剣な表情が目に入ってきて、怯んでしまった。
鼓動がドクドクと不穏な音を立てている。私は胸の前できゅっと手を握って息を呑んだ。
「確かに、俺が君を知るきっかけになったのは、二年前の『あの事件』だった。偽名を使ったのは、『千堂柊一朗』として君の前に立ったんじゃ、勝算がないと思ったからだ。こんな肩書きじゃ避けられることは目に見えている。先入観を持たれずに、ひとりの男として見てもらうためには、別人に――『穂積柊一』になるしかないと思った」
そして、私は彼の期待通り、『穂積柊一』に恋をした。ふたり、体を重ね合い、これからも関係が続いていく……はずだった。
ここで私が彼の正体に気づいて逃げ出してしまったのは、誤算なのだろう。
もしもあのまま関係が続いていたら、いつかは正体を打ち明けてくれるつもりだったのだろうか。