180センチ以下は認めない
そうだよね。向井さんは150センチに満たないくらいのかわいらしい女の子。新人さんだから、22歳くらいかな。私ですら、守ってあげたくなっちゃうようなかわいい女の子なんだもん。
そんな、かわいい子だから、山形先生に選ばれたんだ。
私が選ばれることなんて、あるわけないんだ。
トイレから出ても席に戻れず、会場の外の壁にもたれかかる。
帰っちゃおうかな・・・
「加藤。大丈夫か?」宮野先生が心配そうな顔で覗き込んできた。
「大丈夫ですよ。そんなに飲んでないので。」そう言って作り笑いを浮かべると
「酒のことじゃないよ。山形のこと」と。
えっ?ばれてる?私が山形先生が好きだったこと。
「何言っているんですか?山形先生、ご結婚されるんですね。向井さんと付き合ってるなんて、知らなかったな~。宮野先生は知ってたんですか?先生もうらやましいんじゃないですか?あんなかわいい子ですよ。若いしちっちゃいし。かわいいし。看護師さんだし。白衣の天使だし。」
なんとかごまかそうと話し出すが、自分で言っていて支離滅裂になってきている。
「加藤・・・」と、なぜか、宮野先生に抱きしめられた。
「もう、言わなくていい。泣いていい。もう山形のことはあきらめろ。今日は、泣いていい」
「いやいや、泣かないし。離れてくださいよ」
「泣かないって、もう、泣いてるじゃん」
いつの間にか、涙を流してたらしい。
「帰ろう。送ってく。それとも、飲みなおす?」
「一人で帰れます。帰ります」
「今日は、送ってくよ。」
私は、会場には戻らず、宮野先生がこっそり持ってきてくれたコートを着て、店を出た。