迷惑なんて思ってないよ
まだまだ子供で、私より年下の弟だと簡単に考えていたのに現実は違った。私の力は一匹の蟻と象くらいの差があった。引き離そうと腕に力を入れても一ミリメートルも動かなかった。晴人の腕の中からどれだけ逃げようと暴れても、押さえ込まれて意味を成さなかった。

「お願い・・・っ、離れて・・・っ」

「やめろ!晴人!お前、おかしいぞ!」

「柏崎さん!大丈夫!?」

声を絞り出した私の願いを聞いてくれたのは晴人本人ではなく凛太郎くんと慶太郎くんだった。どこかに隠れていたのか、戻ってきてくれたのかは分からないけれど二人が晴人を引き剥がしてくれたのは確かだった。
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