迷惑なんて思ってないよ
慶太郎くんが起き上がった晴人を取り押さえ、凛太郎くんが私の下に駆け寄ってきてくれた。
相手は弟だと思っている晴人だったのに男の一面を見てしまったからなのかもしれない。凛太郎くんの顔を見た瞬間、震えと涙が止まらなくなっていた。
たぶん、晴人との圧倒的な力の差を体で感じ、怖いと思ってしまったんだ。一人の男として見ざるを得なくなってしまったんだ。

「ごめん・・・、ごめんな・・・!」

抱き締めてくれた凛太郎くんの腕の中で私は首を縦に動かす事しか出来なかった。たぶん、凛太郎くんが何で謝っていたのかも分かっていない。謝っていると分かっているのかさえ危うい。でも、私の心は凛太郎くんの体温を感じる事で確かに平常心を保てるようになっていっていた。安心して落ち着く事が出来ていた。
凛太郎くんの魔法のような体温に助けられながら、周りの声をちゃんと理解出来るようになった耳に飛び込んできた第一声は晴人だった。
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