迷惑なんて思ってないよ
自分はこの世界の中で一番汚れた存在だって思ってきたのかな。それなら俺だってそうだ。親族でもないのに引き取ってくれた理事長に酷い言葉を沢山ぶつけてきた。本当の母親じゃないくせにとか、何で理事長が生きていて母が亡くなったんだとか。母が亡くなった時、理事長は別の国にいて関与していた訳じゃないのに。

「・・・俺だって酷い男だ。柏崎さんを泣かせてしまったのだから」

抱き締める事は出来なかった。今抱き締める事が出来たなら、好きになってくれたのかもしれない。でも、催眠術でも掛けてわざと好きにさせたようで嫌だったんだ。普通に関わっていく中で本当の俺を知ってから好きになってほしかったんだ。だから俺は、しゃがみ込んでしまった彼女の背中に手を添える事で精一杯だった。泣いている彼女を強引になんて連れ去れなかったんだ。
< 20 / 260 >

この作品をシェア

pagetop