迷惑なんて思ってないよ
柏崎さんを見ている時が一番心が落ち着けて、一番和んで。その代償としてきゅんっと胸が締め付けられるけれど、皆に追われている時の苦痛が授業中、静かに柏崎さんを見つめている事によって晴れていく。浄化されていくみたいに心が楽になる。そんな事を素直に言って嫌われればもう見つめられなくなる。そんな惜しい事を俺自身のせいで逃したくはなかった。

「俺は・・・。学校ならやっぱりここかな。誰も追ってこないし、・・・それに、運が良かったら・・・柏崎さんにも会えるし・・・」

俺の言葉を聞いてにこっと笑った柏崎さんの笑顔は入学式の日に屋上で見たあの笑顔と同じだった。そうか、柏崎さんの本当の笑顔はこの表情なんだ。
入ってくるはずのない風が俺たちの髪と俺の心を揺らしていった。その事を彼女も不思議に思ったのか、屋上を見渡していた。
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