迷惑なんて思ってないよ
心の中で感謝しながら、私は晴人の手を引いて裏口の伯母の家にある玄関から外へ出た。表は私たちと一緒に越してきた祖父母が経営する飲食店、裏はただの住居。でも、その間に祖父母が住居として使っている居間と部屋があるから私と晴人はほとんどこっちにいる。

「やっと着いた・・・」

「うん・・・」

お墓参りと言っても両親の墓石がある場所に行くんじゃない。母の好きだった海が津波という形で両親を奪った。そんな、私たちの生まれ故郷に来たんだ。いつもは瓦礫しかないこの町に行く交通手段は無い。歩いていくには遠すぎる。でも、津波が来たその日だけはバスが私たちをまだ見つからない両親の下へと連れていってくれる。今日だけは誰にも邪魔されたくなかったんだ。
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