迷惑なんて思ってないよ
驚いて洗面所の扉に頭をぶつけてしまった私を心配してくれる手が温かくて涙が出そうだった。凛太郎くんの体温に触れて安心してしまったんだ。でも、ここで泣くわけにはいかない。存在しているだけで面倒なのに、泣いてしまえば余計に面倒を掛けてしまう。

「ったぁ・・・」

「クスッ・・・。何か、柏崎さんのそういう声初めて聞いた」

「そうだったっけぇ?」

後頭部を押さえて痛がる私に何を思ったのか、笑い出す凛太郎くん。そんなに面白がられるような事はしていないはずなんだけれど、本人がそれで楽しいなら良いのかもしれない。後頭部が痛い事に変わりはないけど。
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