迷惑なんて思ってないよ
首の後ろに手を回して片方の頬に彼女の頬を付けた時、やっと我に返った。いつもの、俺の心を踊らせる彼女独特の良い香りがしたから。

「へっ!?嘘!本物!?」

「おはようございます」

「ごめっ!俺っ!えっとっ、寝惚けてて!」

慌てて起き上がった俺にやっと目を覚ましたかというような表情で笑った彼女。良かった。俺たちの距離はちゃんと縮まって来ているんだ。そうは思ったのも一瞬だけだった。
彼女が屋上に来たであろう時からの自分の行動をどう説明すれば良いのか、忙しなく頭を回転させたんだ。でも、出てくるのは在り来たりな寝惚けていたという理由だけ。
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