迷惑なんて思ってないよ
瓦礫を掻き分けて両親の手掛かりを探す晴人。でも、もうあれから八年。例え骨が見付かったとしても、もう誰のどの骨なんだか分からない。それなら奇跡と言えるほど分かりやすい所に落ちていた両親の結婚指輪を形見として持っておいた方が良い。何もないよりはその方が。

「でも姉ちゃん!」

「この町は、ここに住んでいた人たちにとって一番安らかに眠れる場所。・・・そう思おう?」

晴人の前で泣いてはいけない。私は流しそうになった涙を必死に堪えた。それが、母と交わした最後の言葉だったから。
母はいつも口うるさく言っていた。これからの時代、女の子も強くなきゃいけないと。力ではなく、心を強くしなきゃ何も出来なくなると。
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