迷惑なんて思ってないよ
何の話をしているのかは分からなかったけれど、早く帰りたかった。晴人が教室の出入り口で待っていたから。
凛太郎くんは私を友達としか思っていない。これだけは何かある度に再確認している。だって凛太郎くんが告白される度に私とは何もないのか訊かれている。

「慶太郎くん、離してください。今日はもう帰ります」

「着いてく!」

「慶!我が儘言うなって!ごめん、柏崎さん。行って」

引き剥がしてくれた凛太郎くんに頭を下げ、私は晴人と帰路に着いた。とは言ってもそのまま帰る訳じゃない。両親が眠るあの町に行く。また過去を思い出す日が来たんだ。でも、今日はいつもと違う。
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