迷惑なんて思ってないよ
いつも自分に言い聞かせるように言っていた。それに、結婚記念日の贈り物を買いに行く提案をしたのも晴人だった。たぶん、それが余計に堪えているんだと思う。今でも一人になるのが怖くて私と同じ部屋を使ってるくらいだから、凄く深い傷を負っているんだと思う。
私たちはバスの運転をしてくれている津田さんと一緒にこの町を後にした。もう少しいたかったけれど、私たちのために動いてくれている津田さんに迷惑をかける訳にはいかないから。それに、帰りが遅くなればなるほど祖父母や伯母が心配するだろうから。私たちは帰るしか無いんだ。窓から外を見た時、太陽の降り注ぐ光が寄り添う両親を照らしてくれている気がした。

「ありがとうございました」

「良いんだ。また来年、会いに行こう」
< 9 / 260 >

この作品をシェア

pagetop