迷惑なんて思ってないよ
私には無理だから、動かそうとしても動かなかったから。両親を助けてと何度も呼んだ。
私の声は凛太郎くんや慶太郎くんにも届いていた。津田さんと一緒に駆けつけてきてくれた二人は動きやすいように上着を脱ぐと一緒に瓦礫を退かしてくれた。退かしてくれた瓦礫の下には見間違えではない。あの日、父が着ていた服がちゃんとあった。
謝る事も感謝する事も忘れ、私は父の服を拾い上げて抱き締めた。十年間、ずっと探し続けてきた両親のいる場所。やっと今日、見付けた。父の着ていた服の下に重なるようにあった母の着ていたワンピース。
そっか、父は最後まで母の事を愛していたんだ。心臓の最後の音が止まってまで母を守ってくれていたんだ。心臓の音が止まってからも離れないように、私たちがちゃんと母を見付けられるようにずっと守ってくれていた。ずっとここで待ってくれていたんだね。
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