迷惑なんて思ってないよ
彼女が向かっていた場所に着いて初めて分かった。自分の命を終わらせようとしていたんだ。
俺はすぐに追い掛けて彼女の腕を引いた。まだちゃんと守ってあげれていないのに。守る前に届かない場所に行かれては困る。

「待って!柏崎さん!柏崎さん!!」

「凛太郎・・・くん・・・?」

「くそっ、何でっ」

まだ様子が変だった。俺の目を見たけれど心ここにあらずで、目が合っているはずなのに俺を見ていなかった。
俺を見てくれ。いつもの作り笑顔でも良い。戻ってきてくれ。そう思っても、必死になって両腕を掴んで体を揺らしても柏崎さんの目は覚めなかった。
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