迷惑なんて思ってないよ
不意を突かれた。これはきっと何かの間違い。海の波が生んだ偶然か何かだ。じゃないと柏崎さんの唇が俺の唇と重なる訳がない。
俺はすぐに引き離して何とか彼女の目を覚まさせた。けれど、今度は海に怖がって俺の話を聞けるような状態ではなくて。今度は落ち着かせる事に必死になっていた。

「・・・やだっ!何でっ!」

「待って!柏崎さん落ち着いて!」

「やだっ!嫌・・・っ!」

「大丈夫!!大丈夫だから!」

抱き締める事しか出来なかった。混乱して動き回る彼女を連れて歩けるほど、俺には筋肉も体力もなかった。
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