迷惑なんて思ってないよ
彼女が自分の足で歩いてくれなきゃ、俺一人では陸まで辿り着けなかった。だから、せめて陸まで歩いてくれるほどの正気を取り戻せたらって思ったんだ。運良く彼女は少しだけ正気を取り戻してくれた。俺の体を抱き締め返し、助けてと俺の名前を呼んでくれたんだ。
「凛太郎くん・・・!」
「取り敢えず砂浜まで行こう。大丈夫だから、絶対に離しちゃダメだよ」
柏崎さんは俺の胸の中で何度も頷いた。覚束無い足でも歩いてくれるだけ、前に進もうとしてくれるだけマシだった。同じ方向に進む事で溺れずに済んでいるのかなって。
陸に上がっても、柏崎さんは俺の腕の中で震えていた。そうだ。人が亡くなるってこういう事だった。正気なんて取り戻せるわけもないんだ。
「凛太郎くん・・・!」
「取り敢えず砂浜まで行こう。大丈夫だから、絶対に離しちゃダメだよ」
柏崎さんは俺の胸の中で何度も頷いた。覚束無い足でも歩いてくれるだけ、前に進もうとしてくれるだけマシだった。同じ方向に進む事で溺れずに済んでいるのかなって。
陸に上がっても、柏崎さんは俺の腕の中で震えていた。そうだ。人が亡くなるってこういう事だった。正気なんて取り戻せるわけもないんだ。