ある日、学校に監禁されました。
「他のみんなにはあげなくていいんですか?」


敦美が乾パンを口に入れて、そう聞いた。


「あぁ……きっと、他の先生たちが配ってるから」


そう言う臼山先生はどこか自信がなさそうだった。


他の先生や他の生徒なんて、何人生き残っているかわからない。


当初は聞こえてきていた声や物音は、今はもう聞こえてこなくなっていた。


「さっき、トイレで死体を見ました」


混乱するだろうから誰にも言うつもりはなかったのに、つい口をついて出ていた。


さっきみた光景が忘れられない。


「え?」


真っ先に反応したのは敦美だった。


「女の子が1人。だぶん、暑さのせいです」


「……そうか」


臼山先生はそう答えただけで、他にはなにもいわなかった。


少しでも熱を逃がすためには窓を開けるしかない。


けれどそれはできないから、対策を考える方法がないのだ。
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