天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「お前ら、何してるんだ?」
突然聞こえてきた声。

この声はよく知っている。
でも、振り返られない。

「どういうことだ?」
私ではなく、一颯さんに向けられた言葉。

グラスを奪いあいながら、私と一颯さんの手は重なっている。
当然体も接近し、お互いの距離もない。
ああ、1番最悪のシチュエーションで知られてしまう。
できることなら夢であってほしい。
こんな形で泰介と遭遇したくない。

私はギュッと唇を噛み締め、下を向いた。


「説明しろっ」
初めて聞いた泰介の怒鳴り声。

「泰介、落ち着け」
有樹さんが声をかけるけれど、泰介から伝わってくる怒りのオーラは変わらない。

「何とか言えよ」
泰介が詰め寄り、一颯さんの襟首をつかむ。

「お願いやめて」
とっさに私は2人の間に入っていた。

「どけっ」
凄みを効かせた泰介が言うけれど、私は一颯さんをかばったまま。

泰介の視線だけが鋭さを増していく。
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