天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
カラン カラン。
ドアを開け、店に入る。

そんなに大きな店ではないし、立地的にも客は皆常連客。
いつも混んでいることはない。

「いらっしゃいま  」
なぜか、店のマスターである有樹の声が止まった。

ん?

見ると、客はテーブル席に1組と、カウンターに2人。

一颯?

カウンターに座る後ろ姿は間違いなく一颯だ。
そして、その横には・・・

「爽子」

なぜ、お前がここにいるんだ。

それに、一颯と爽子は手を重ねている。
体も接近し、
「もうやめろって」
「イーヤッ」
まるでじゃれ合っているカップルじゃないか。

今、俺は何を見せられているんだろう。

「バカ、やめろ」
一颯が止めるのも聞かず、爽子がグラスに口をつける。
「大丈夫、酔ってませんから」
うつろな目で話す爽子。

馬鹿野郎。
そんな顔を俺以外に見せるんじゃない。
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