天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
俺の両親は2人とも中学校の教師をしていた。
父さんは小学校に上がる前に病気で亡くなったため、俺の中の記憶はあまり多くない。
でも、優しくて厳しい人だった。
まだ小さかった俺が、母さんに止められていた川遊びをしているところを見つけた父さん。
「全員そこに並びなさい」
川から上げられ、友達4人と一緒に整列させられた俺たちに、
ゴンッ。
父さんのげんこつが落ちてきた。
「川遊びはしたらダメだって言われているだろう。知らなかったのか?」
「・・・」
知っていた俺たちは答えられない。
「分かっていてやったのはもっと悪い」
ゴンッ。
もう一度げんこつが落とされた。
俺も友達達も、痛さと怖さで泣きじゃくった。
その後それぞれの家に送り届けられ、家に帰った俺は「反省するまで出さない」と押し入れに閉じ込められた。
暗くて、狭くて、熱くて、本当に怖かった。
いくら泣いても叩いても、父さんは出してはくれなくて、結構長い間閉じ込められていたと思う。
「出なさい」
そう言われたときには、涙と鼻水でグチャグチャだった。
押し入れから出てふと見ると、扉のすぐ前に父さんが今まで座っていた痕跡。
ああ、俺が閉じ込められている間父さんもここにいてくれたんだと気づいて、
「ごめんなさい」
素直に謝れたのを覚えている。
俺も、いつかは親になる。
決して器用ではない俺は、今はやりの『友達みたいな親子』にはなれないと思う。
『父さんなんて大嫌い』と、言われてしまうかもしれない。
それでも、親としていけないことはいけないと言いたい。