天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「ねえ爽子」
シェフオススメのコース料理をいただきながら、泰介が真面目な顔をした。

「君は夏輝のことばかり気にするけれど、俺だって爽子と一颯の事が気になって仕方ない」
「えっ、それは・・・」

一颯さんと私はたった一度の・・・夏輝さんとは違う。

「俺だって、爽子が一颯といれば気になるし、腹も立つ。できれば会って欲しくないと思う」
「そんな、一颯さんは仕事上でもパートナーなのよね」
きっとこれからだって、会う機会はあるはず。

「でも、嫌なんだ。ましてや、2人で飲みに行くなんて論外だよ」

これって・・・嫉妬?
フフフ。
嫌な気分ではない。

「わかりました。一颯さんと2人で会うことはしません。その代わり、泰介も、夏輝さんとふたりで会わないで」

「分かった。努力する」
「じゃあ」
私は小指を立てて差し出した。

「え?」
泰介の困った顔。

「ほら」
「ここで?」
うん。
「今?」
「もちろん」
約束はその時しないと意味がない。

キョロキョロと周りを見回してから、右手を差し出す泰介。

『指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます』
遠くの方で店員が笑っているけれど、私は気にしない。
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